ゼロトラストセキュリティでは、すべてのアクセス要求を検証し、継続的にリスクを評価することが求められます。その中で、エンドポイントでの脅威検知と対応は、組織のセキュリティを守る最後の砦として極めて重要な役割を果たします。
従来のウイルス対策ソフトウェアでは、シグネチャベースの検知に依存しており、未知の脅威やファイルレス攻撃には対応できませんでした。EDR(Endpoint Detection and Response)とXDR(Extended Detection and Response)は、この限界を超え、高度な脅威を検知・対応するための次世代セキュリティ技術です。
本記事では、EDRとXDRについて以下の内容を解説します。
- EDRとXDRの定義と違い
- 脅威検知の仕組みとテクノロジー
- インシデント対応フローと自動化
- 主要なEDR/XDRソリューションの比較
- ゼロトラストアーキテクチャにおけるEDR/XDRの位置づけ
この記事を読むことで、エンドポイントでの脅威検知・対応の仕組みを理解し、組織に適切なソリューションを選定できるようになります。
前提知識
本記事を理解するために、以下の知識があることを前提としています。
- ゼロトラストの基本原則を把握している
- デバイス信頼性の概念を理解している
- 基本的なサイバーセキュリティの知識がある
ゼロトラストの基本原則についてはゼロトラストセキュリティ入門 - 基本原則と7つの柱を理解するを、デバイス信頼性についてはゼロトラストにおけるデバイス信頼性の確立 - エンドポイント管理の基礎を先に読むことをお勧めします。
期待される学習成果
本記事を読み終えると、以下のことができるようになります。
- EDRとXDRの違いと各々の特徴を説明できる
- エンドポイントでの脅威検知の仕組みを理解できる
- インシデント対応フローを設計できる
- 組織のニーズに合ったソリューションを選定できる
- ゼロトラストアーキテクチャにEDR/XDRを位置づけられる
EDRとは何か
EDR(Endpoint Detection and Response)は、エンドポイントを継続的に監視し、脅威の証拠を検知して、自動的な対応アクションを実行するサイバーセキュリティ技術です。
EDRの定義と目的
EDRは、従来のアンチウイルスソフトウェアの限界を克服するために開発されました。2013年にGartner社のAnton Chuvakin氏によって提唱された概念で、以下の目的を持ちます。
flowchart TB
subgraph purpose["EDRの目的"]
A["継続的監視<br/>エンドポイントの動作を24時間記録"]
B["脅威検知<br/>未知の脅威や不審な行動を発見"]
C["調査支援<br/>インシデントの根本原因を特定"]
D["対応自動化<br/>脅威を封じ込め・修復"]
end
A --> B
B --> C
C --> D
D --> AEDRは、エンドポイント上で発生するすべてのアクティビティをログとして記録し、AI/機械学習を活用してそのデータを分析します。これにより、シグネチャベースの検知では発見できない高度な脅威を特定できます。
EDRの主要コンポーネント
EDRソリューションは、一般的に以下のコンポーネントで構成されます。
flowchart LR
subgraph endpoint["エンドポイント"]
Agent["EDRエージェント<br/>データ収集・監視"]
end
subgraph cloud["クラウド/サーバー"]
Collector["データ収集基盤<br/>テレメトリの集約"]
Analytics["分析エンジン<br/>AI/ML による脅威検知"]
ThreatIntel["脅威インテリジェンス<br/>最新の脅威情報"]
end
subgraph console["管理コンソール"]
Dashboard["ダッシュボード<br/>可視化・アラート"]
Response["対応機能<br/>封じ込め・修復"]
Hunting["脅威ハンティング<br/>プロアクティブな調査"]
end
Agent --> Collector
Collector --> Analytics
ThreatIntel --> Analytics
Analytics --> Dashboard
Dashboard --> Response
Dashboard --> Hunting
Response --> Agent各コンポーネントの役割は以下の通りです。
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| EDRエージェント | エンドポイントにインストールされ、プロセス実行、ファイル操作、ネットワーク接続、レジストリ変更などを監視・記録 |
| データ収集基盤 | 各エンドポイントから送信されるテレメトリデータを集約・保存 |
| 分析エンジン | AI/機械学習を使用してデータを分析し、脅威を検知 |
| 脅威インテリジェンス | グローバルな脅威情報を提供し、検知精度を向上 |
| 管理コンソール | セキュリティチームが脅威を可視化し、対応を実行するインターフェース |
EDRの検知手法
EDRは複数の検知手法を組み合わせて、高度な脅威を発見します。
1. 振る舞い分析(Behavioral Analysis)
プロセスやユーザーの通常の振る舞いをベースラインとして学習し、逸脱した行動を検知します。例えば、通常実行されないPowerShellスクリプトの実行や、異常な時間帯のファイルアクセスなどを検出します。
2. IOC(Indicator of Compromise)マッチング
既知の脅威に関連するファイルハッシュ、IPアドレス、ドメイン、レジストリキーなどと照合し、侵害の痕跡を検知します。
3. MITRE ATT&CKフレームワークとの連携
攻撃者の戦術・技術・手順(TTP)を体系化したMITRE ATT&CKフレームワークに基づいて、攻撃パターンを検知します。
flowchart LR
subgraph attck["MITRE ATT&CK フレームワーク"]
T1["初期アクセス<br/>フィッシング等"]
T2["実行<br/>スクリプト実行等"]
T3["永続化<br/>レジストリ変更等"]
T4["権限昇格<br/>特権取得等"]
T5["防御回避<br/>難読化等"]
T6["認証情報アクセス<br/>パスワードダンプ等"]
T7["横展開<br/>リモート実行等"]
T8["データ収集<br/>ファイル収集等"]
T9["流出<br/>データ送信等"]
end
T1 --> T2 --> T3 --> T4 --> T5 --> T6 --> T7 --> T8 --> T94. 機械学習による異常検知
教師あり学習と教師なし学習を組み合わせて、未知のマルウェアや攻撃パターンを検知します。
XDRとは何か
XDR(Extended Detection and Response)は、EDRの概念を拡張し、エンドポイントだけでなく、ネットワーク、クラウド、メール、アイデンティティなど、複数のセキュリティドメインにわたる検知と対応を統合したプラットフォームです。
XDRの定義と目的
XDRは2018年頃から提唱され始めた比較的新しい概念です。セキュリティ運用の課題であった「ツールの断片化」と「アラート疲れ」を解決することを目的としています。
flowchart TB
subgraph traditional["従来のアプローチ"]
direction TB
EDR1["EDR"]
NDR1["NDR"]
SIEM1["SIEM"]
Email1["メールセキュリティ"]
Cloud1["クラウドセキュリティ"]
EDR1 -.-> |個別アラート| SOC1["SOC<br/>手動で相関分析"]
NDR1 -.-> SOC1
SIEM1 -.-> SOC1
Email1 -.-> SOC1
Cloud1 -.-> SOC1
end
subgraph xdr["XDRアプローチ"]
direction TB
subgraph sources["データソース"]
EP["エンドポイント"]
NW["ネットワーク"]
CL["クラウド"]
ID["アイデンティティ"]
EM["メール"]
end
XDRPlatform["XDRプラットフォーム<br/>自動相関・統合分析"]
EP --> XDRPlatform
NW --> XDRPlatform
CL --> XDRPlatform
ID --> XDRPlatform
EM --> XDRPlatform
XDRPlatform --> |統合インシデント| SOC2["SOC<br/>効率的な対応"]
endEDRとXDRの違い
EDRとXDRの主な違いを以下の表にまとめます。
| 観点 | EDR | XDR |
|---|---|---|
| 対象範囲 | エンドポイントのみ | エンドポイント、ネットワーク、クラウド、メール、アイデンティティなど |
| データソース | エンドポイントテレメトリ | 複数のセキュリティ製品からのテレメトリ |
| 相関分析 | エンドポイント内の相関 | 複数ドメインをまたいだ相関 |
| 可視性 | エンドポイントに限定 | 組織全体のセキュリティ態勢 |
| 検知能力 | エンドポイント上の脅威 | 複合的な攻撃キャンペーン |
| 対応範囲 | エンドポイントの隔離・修復 | 複数ドメインにわたる自動対応 |
XDRの種類
XDRには主に2つのアプローチがあります。
ネイティブXDR(Native XDR)
単一ベンダーのセキュリティ製品スイートを統合したXDRです。同一ベンダーの製品間で深い統合が実現され、導入・運用が比較的容易です。
- 例:Microsoft Defender XDR、Palo Alto Networks Cortex XDR、CrowdStrike Falcon Platform
オープンXDR(Open XDR / Hybrid XDR)
複数ベンダーのセキュリティ製品からデータを収集し、統合するXDRです。既存のセキュリティ投資を活かしながらXDRを実現できますが、統合の複雑さが課題となります。
- 例:Stellar Cyber Open XDR、Hunters XDR
flowchart TB
subgraph native["ネイティブXDR"]
direction TB
NV["単一ベンダー製品群"]
NV --> N1["EDR"]
NV --> N2["NDR"]
NV --> N3["メール保護"]
NV --> N4["クラウド保護"]
N1 & N2 & N3 & N4 --> NP["統合プラットフォーム<br/>深い統合"]
end
subgraph open["オープンXDR"]
direction TB
O1["ベンダーA EDR"]
O2["ベンダーB ファイアウォール"]
O3["ベンダーC CASB"]
O4["ベンダーD メール"]
O1 & O2 & O3 & O4 --> OP["XDRプラットフォーム<br/>API統合"]
end脅威検知の仕組み
EDR/XDRがどのように脅威を検知するのか、その技術的な仕組みを詳しく見ていきます。
テレメトリデータの収集
EDRエージェントは、エンドポイント上で発生するさまざまなイベントを収集します。
flowchart TB
subgraph telemetry["収集されるテレメトリデータ"]
P["プロセス情報<br/>起動・終了・親子関係"]
F["ファイル操作<br/>作成・変更・削除・実行"]
N["ネットワーク<br/>接続・通信先・データ量"]
R["レジストリ<br/>キー変更・追加・削除"]
M["メモリ<br/>インジェクション・フック"]
U["ユーザー操作<br/>ログイン・権限変更"]
end
subgraph agent["EDRエージェント"]
Kernel["カーネルドライバー<br/>低レベル監視"]
UserMode["ユーザーモードフック<br/>API監視"]
ETW["ETW/eBPF<br/>イベントトレース"]
end
P & F & N & R & M & U --> Kernel & UserMode & ETW主要な収集データには以下が含まれます。
| データ種別 | 具体例 | 検知に活用される場面 |
|---|---|---|
| プロセス | 実行ファイルパス、コマンドライン引数、親プロセス、子プロセス | 不審なプロセスチェーンの検知 |
| ファイル | ハッシュ値、作成・変更日時、デジタル署名 | マルウェアの検知、改ざんの検知 |
| ネットワーク | 宛先IP/ポート、DNS要求、データ転送量 | C2通信、データ流出の検知 |
| レジストリ | 変更されたキー、値、永続化設定 | マルウェアの永続化検知 |
| 認証 | ログイン試行、資格情報使用、特権昇格 | 不正アクセス、横展開の検知 |
分析と検知のプロセス
収集されたテレメトリデータは、複数の分析手法を通じて脅威として検知されます。
flowchart LR
subgraph collection["データ収集"]
Raw["生テレメトリ"]
end
subgraph enrichment["エンリッチメント"]
Normalize["正規化"]
Context["コンテキスト付加"]
TI["脅威インテリジェンス照合"]
end
subgraph detection["検知"]
Rules["ルールベース検知"]
ML["機械学習検知"]
Behavior["振る舞い検知"]
end
subgraph correlation["相関分析"]
Timeline["タイムライン構築"]
Attack["攻撃チェーン特定"]
end
subgraph output["出力"]
Alert["アラート生成"]
Incident["インシデント作成"]
end
Raw --> Normalize --> Context --> TI
TI --> Rules & ML & Behavior
Rules & ML & Behavior --> Timeline --> Attack
Attack --> Alert --> Incident1. エンリッチメント
生データに対して、以下の処理を行い、分析しやすい形に変換します。
- 正規化: 異なる形式のデータを統一フォーマットに変換
- コンテキスト付加: ユーザー情報、デバイス情報、地理情報などを追加
- 脅威インテリジェンス照合: 既知のIOCとマッチング
2. 検知エンジン
複数の検知手法を並列で実行し、脅威を発見します。
- ルールベース検知: YARAルール、Sigmaルールなどの定義済みパターンとマッチング
- 機械学習検知: 教師あり/教師なし学習モデルによる異常検知
- 振る舞い検知: 正常な振る舞いからの逸脱を検知
3. 相関分析
個別のアラートを時系列で並べ、攻撃チェーン全体を可視化します。これにより、断片的なイベントから攻撃の全体像を把握できます。
検知精度を高める技術
EDR/XDRの検知精度を高めるために、以下の技術が活用されています。
脅威インテリジェンスの活用
グローバルな脅威情報を収集・分析し、最新の攻撃手法やIOCを検知ルールに反映します。多くのEDR/XDRベンダーは、自社の顧客ベースから収集した匿名化データを活用して、脅威インテリジェンスを強化しています。
UEBA(User and Entity Behavior Analytics)
ユーザーやエンティティ(デバイス、アプリケーションなど)の通常の振る舞いをベースラインとして学習し、異常な行動を検知します。これにより、内部脅威や侵害されたアカウントによる攻撃を発見できます。
Attack Surface Management
組織の攻撃対象面を継続的に評価し、脆弱性や設定不備を特定します。これにより、攻撃が発生する前にリスクを軽減できます。
インシデント対応フロー
EDR/XDRによる脅威検知後のインシデント対応フローを解説します。
自動対応と手動対応
EDR/XDRは、脅威の深刻度に応じて自動対応と手動対応を使い分けます。
flowchart TB
Detection["脅威検知"] --> Severity{"深刻度評価"}
Severity -->|重大| AutoContain["自動封じ込め<br/>デバイス隔離・プロセス停止"]
Severity -->|高| AutoAlert["自動アラート<br/>SOCへ即時通知"]
Severity -->|中| Queue["キュー追加<br/>分析待ち"]
Severity -->|低| Log["ログ記録<br/>後日レビュー"]
AutoContain --> Investigation["調査"]
AutoAlert --> Investigation
Queue --> Investigation
Investigation --> Remediation["修復"]
Remediation --> Recovery["復旧"]
Recovery --> PostIncident["事後分析"]主な対応アクション
EDR/XDRが提供する主な対応アクションは以下の通りです。
| アクション | 説明 | 使用場面 |
|---|---|---|
| プロセス停止 | 悪意あるプロセスを強制終了 | マルウェア実行中 |
| ファイル隔離 | 疑わしいファイルを検疫フォルダに移動 | マルウェア検知時 |
| ネットワーク隔離 | デバイスをネットワークから切断 | アクティブな侵害時 |
| ユーザー無効化 | 侵害されたアカウントを無効化 | アカウント侵害時 |
| ファイル削除 | 悪意あるファイルを完全削除 | 確認済みマルウェア |
| レジストリ修復 | 改ざんされたレジストリを復元 | 永続化の除去 |
| フォレンジック収集 | 詳細調査用にデータを収集 | 深刻なインシデント |
Real Time Response(RTR)
多くのEDR製品は、リモートからエンドポイントに直接アクセスして調査・対応を行う機能を提供しています。
sequenceDiagram
participant Analyst as セキュリティアナリスト
participant Console as EDRコンソール
participant Agent as EDRエージェント
participant Endpoint as エンドポイント
Analyst->>Console: RTRセッション開始
Console->>Agent: 接続要求
Agent->>Endpoint: ローカル権限でアクセス
Analyst->>Console: コマンド実行(ps, netstat等)
Console->>Agent: コマンド転送
Agent->>Endpoint: コマンド実行
Endpoint->>Agent: 結果
Agent->>Console: 結果返却
Console->>Analyst: 結果表示
Analyst->>Console: 修復アクション
Console->>Agent: アクション実行要求
Agent->>Endpoint: プロセス停止・ファイル削除等RTRにより、セキュリティチームは物理的にアクセスできない遠隔地のデバイスでも、リアルタイムで調査と対応を行えます。
自動化プレイブック
定型的なインシデント対応は、プレイブック(自動化ワークフロー)として定義し、自動実行できます。
flowchart TB
Trigger["トリガー<br/>特定のアラート発生"] --> Condition{"条件判定<br/>深刻度・信頼度"}
Condition -->|条件合致| Action1["アクション1<br/>デバイス隔離"]
Action1 --> Action2["アクション2<br/>ファイルハッシュ収集"]
Action2 --> Action3["アクション3<br/>脅威インテリジェンス照合"]
Action3 --> Decision{"判定<br/>確認済み脅威?"}
Decision -->|Yes| Remediate["自動修復<br/>マルウェア削除・復旧"]
Decision -->|No| Escalate["エスカレーション<br/>アナリストへ通知"]
Condition -->|条件不合致| Log["ログ記録のみ"]
Remediate --> Report["レポート生成"]
Escalate --> Manual["手動調査"]主要なEDR/XDRソリューション
市場で広く採用されている主要なEDR/XDRソリューションを紹介します。
Microsoft Defender for Endpoint / Defender XDR
Microsoftが提供するエンタープライズ向けエンドポイントセキュリティプラットフォームです。
特徴
- Windows、macOS、Linux、Android、iOSをサポート
- Microsoft 365エコシステムとの深い統合
- Microsoft Defender XDRとして、Defender for Identity、Defender for Office 365、Defender for Cloud Appsと統合
- Microsoft Sentinelとの連携によるSIEM/XDR統合
プランと機能
| プラン | 主な機能 |
|---|---|
| Defender for Business | 中小企業向け、基本的なEDR機能 |
| Defender for Endpoint Plan 1 | 次世代保護、攻撃面の削減 |
| Defender for Endpoint Plan 2 | EDR、自動調査と修復、脅威ハンティング |
| Defender XDR | 複数のDefender製品の統合XDR |
CrowdStrike Falcon
クラウドネイティブなアーキテクチャで知られるEDR/XDRプラットフォームです。
特徴
- 軽量なシングルエージェント
- AIを活用した脅威検知(Charlotte AI)
- 脅威インテリジェンス統合(Falcon Intelligence)
- 24時間365日のマネージド脅威ハンティング(Falcon OverWatch)
- MITRE ATT&CK評価で高い検知率を記録
主要モジュール
| モジュール | 機能 |
|---|---|
| Falcon Prevent | 次世代アンチウイルス |
| Falcon Insight XDR | EDR/XDR機能 |
| Falcon Discover | IT資産可視化 |
| Falcon Spotlight | 脆弱性管理 |
| Falcon Identity Protection | アイデンティティ保護 |
Palo Alto Networks Cortex XDR
ネットワークセキュリティの大手であるPalo Alto Networksが提供するXDRプラットフォームです。
特徴
- エンドポイント、ネットワーク、クラウドデータを統合分析
- Palo Alto製品(ファイアウォール、Prisma Cloud等)との深い統合
- 機械学習による振る舞い分析
- Unit 42による脅威インテリジェンス
ソリューション選定のポイント
EDR/XDRソリューションを選定する際の主要な評価ポイントは以下の通りです。
flowchart TB
subgraph selection["選定ポイント"]
D["検知能力<br/>MITRE ATT&CK評価結果"]
I["統合性<br/>既存環境との親和性"]
O["運用性<br/>導入・管理の容易さ"]
P["パフォーマンス<br/>エンドポイントへの負荷"]
C["コスト<br/>ライセンス・運用コスト"]
S["サポート<br/>ベンダーサポート体制"]
end| 評価ポイント | 確認事項 |
|---|---|
| 検知能力 | MITRE ATT&CK評価、独立機関のテスト結果、誤検知率 |
| 統合性 | 既存セキュリティツールとの連携、API提供、SIEMとの統合 |
| 運用性 | 管理コンソールの使いやすさ、アラートの品質、レポート機能 |
| パフォーマンス | エージェントのCPU/メモリ使用率、ネットワーク帯域消費 |
| コスト | ライセンス費用、導入費用、運用に必要な人員 |
| サポート | 日本語サポート、SLA、トレーニングプログラム |
ゼロトラストにおけるEDR/XDRの位置づけ
EDR/XDRは、ゼロトラストアーキテクチャにおいて重要な役割を果たします。
ゼロトラストの7つの柱とEDR/XDR
ゼロトラストの7つの柱の中で、EDR/XDRは主に「デバイス」「可視化と分析」「自動化とオーケストレーション」に関連します。
flowchart TB
subgraph pillars["ゼロトラストの7つの柱"]
P1["ユーザー"]
P2["デバイス"]
P3["ネットワーク"]
P4["アプリケーション"]
P5["データ"]
P6["可視化と分析"]
P7["自動化とオーケストレーション"]
end
subgraph edrxdr["EDR/XDRの貢献"]
E1["デバイス健全性評価"]
E2["継続的な脅威監視"]
E3["インシデント自動対応"]
E4["フォレンジック分析"]
end
P2 --> E1
P6 --> E2
P6 --> E4
P7 --> E3条件付きアクセスとの連携
EDR/XDRで検知されたデバイスのリスク状態は、条件付きアクセスポリシーの判断材料として活用できます。
sequenceDiagram
participant User as ユーザー
participant Device as デバイス
participant EDR as EDR
participant CA as 条件付きアクセス
participant App as アプリケーション
User->>Device: アプリケーションアクセス要求
Device->>CA: アクセス要求
CA->>EDR: デバイスリスクスコア照会
EDR->>CA: リスクスコア(高/中/低)
alt リスクスコア:低
CA->>App: アクセス許可
App->>User: 通常アクセス
else リスクスコア:中
CA->>App: MFA要求
App->>User: 追加認証後アクセス
else リスクスコア:高
CA->>User: アクセス拒否
CA->>EDR: 自動調査開始
endこの連携により、エンドポイントの脅威状態に基づいた動的なアクセス制御が実現できます。
SIEM/SOARとの統合
EDR/XDRは、SIEM(Security Information and Event Management)やSOAR(Security Orchestration, Automation and Response)と統合することで、組織全体のセキュリティ運用を効率化します。
flowchart LR
subgraph sources["データソース"]
EDR["EDR/XDR"]
FW["ファイアウォール"]
Proxy["プロキシ"]
IAM["IAM"]
Cloud["クラウドログ"]
end
subgraph siem["SIEM"]
Collect["ログ収集"]
Correlate["相関分析"]
Alert["アラート生成"]
end
subgraph soar["SOAR"]
Playbook["プレイブック"]
Automation["自動化"]
Case["ケース管理"]
end
EDR & FW & Proxy & IAM & Cloud --> Collect
Collect --> Correlate --> Alert
Alert --> Playbook --> Automation
Automation --> EDR
Automation --> Case導入・運用のベストプラクティス
EDR/XDRを効果的に導入・運用するためのベストプラクティスを紹介します。
段階的な導入アプローチ
EDR/XDRの導入は、以下のフェーズで段階的に進めることを推奨します。
flowchart LR
Phase1["フェーズ1<br/>パイロット導入<br/>1-2週間"]
Phase2["フェーズ2<br/>監視モード展開<br/>2-4週間"]
Phase3["フェーズ3<br/>保護モード有効化<br/>継続的"]
Phase4["フェーズ4<br/>高度機能活用<br/>継続的"]
Phase1 --> Phase2 --> Phase3 --> Phase4| フェーズ | 活動内容 | 成功基準 |
|---|---|---|
| パイロット | 限定的な環境でエージェント導入、動作検証 | パフォーマンス影響が許容範囲内 |
| 監視モード | 全社展開、検知のみで自動対応は無効 | 誤検知率の把握、チューニング完了 |
| 保護モード | 自動対応を有効化、段階的に対象拡大 | インシデント対応時間の短縮 |
| 高度機能 | 脅威ハンティング、高度な分析活用 | プロアクティブな脅威発見 |
運用体制の整備
EDR/XDRの効果を最大化するには、適切な運用体制が必要です。
必要なスキルセット
- インシデント対応の基礎知識
- EDR/XDRプラットフォームの操作スキル
- 脅威インテリジェンスの理解
- フォレンジック分析の基礎
運用モデルの選択肢
| モデル | 概要 | 適した組織 |
|---|---|---|
| 自社運用 | 社内SOCチームが運用 | 大企業、セキュリティ人材が充実 |
| MDR利用 | マネージドサービスに委託 | 中小企業、専門人材が不足 |
| ハイブリッド | 一部を委託、重要判断は社内 | 中堅企業、段階的な内製化を目指す |
チューニングと最適化
導入後の継続的なチューニングが、EDR/XDRの効果を左右します。
誤検知対策
- 正常なビジネスアプリケーションの除外設定
- カスタム検知ルールの調整
- アラート重要度の見直し
検知精度向上
- 最新の脅威インテリジェンスの適用
- カスタム検知ルールの追加
- MITRE ATT&CKカバレッジの確認と拡充
まとめ
EDR/XDRは、ゼロトラストセキュリティにおけるエンドポイント防御の要となる技術です。本記事で解説した内容をまとめます。
EDRの特徴
- エンドポイントを継続的に監視し、脅威を検知・対応
- AIと機械学習を活用した高度な検知
- リアルタイムでの調査と対応が可能
XDRの特徴
- EDRを拡張し、複数のセキュリティドメインを統合
- 断片化されたセキュリティツールを統合し、運用効率を向上
- 複合的な攻撃キャンペーンを可視化
導入・運用のポイント
- 段階的なアプローチで導入リスクを軽減
- 継続的なチューニングで検知精度を維持
- 条件付きアクセスやSIEM/SOARとの連携で効果を最大化
EDR/XDRの導入は、単なるツール導入ではなく、セキュリティ運用全体の変革を伴います。組織のセキュリティ成熟度とリソースを考慮しながら、適切なソリューションと運用モデルを選定してください。