はじめに

CursorをチームやOrganization全体で導入する場合、個人利用とは異なる課題が発生します。コーディング規約の統一、セキュリティポリシーの適用、使用状況の可視化など、組織としての管理機能が必要になります。

CursorのBusiness/Enterpriseプランは、これらの課題を解決するための機能を提供しています。Team Rules、一元化された管理ダッシュボード、監査ログ、SAML/OIDC SSOなど、組織標準を維持しながらAI駆動開発を推進するための機能が揃っています。

本記事では、Cursorのチーム導入を成功させるための知識を体系的に解説します。この記事を読むことで、以下のことができるようになります。

  • Business/Enterpriseプランの機能差を理解し、適切なプランを選択できる
  • チームダッシュボードでメンバーを招待・管理できる
  • Team Rulesを活用して組織標準をチーム全体に展開できる
  • 強制ルールとオプションルールを使い分けて効果的なガバナンスを実現できる

実行環境と前提条件

実行環境

項目 要件
Cursor バージョン 2.3以降(2026年1月時点の安定版)
プラン Team(Business)またはEnterprise
権限 チーム管理者(Admin)権限
インターネット接続 必須

前提条件

  • Cursorの基本操作に習熟していること
  • Project Rules(.cursor/rules)の基本的な理解があること
  • 組織のセキュリティポリシーについて把握していること

期待される結果

本記事の手順を完了すると、以下の状態になります。

  • チーム全体で統一されたCursor環境が構築できる
  • Team Rulesによってコーディング規約がメンバー全員に自動適用される
  • 使用状況の分析とレポートでAI活用度を可視化できる
  • セキュリティポリシーを組織全体に適用できる

料金プランの機能比較

Cursorの料金プランは、個人向けとビジネス向けに分かれています。チーム導入を検討する際は、各プランの機能差を理解することが重要です。

個人プラン一覧

プラン 月額料金 主な特徴
Hobby 無料 Agent リクエスト数の制限、制限付きTab補完
Pro $20/月 無制限Tab補完、Background Agents、拡張Agent制限
Pro+ $60/月 Pro + 全モデルで3倍の使用量
Ultra $200/月 Pro + 全モデルで20倍の使用量、新機能への優先アクセス

ビジネスプラン一覧

プラン 月額料金 主な特徴
Team $40/ユーザー/月 共有チャット・コマンド・ルール、一元化請求、使用状況分析
Enterprise カスタム プール使用量、SCIM、監査ログ、優先サポート

TeamプランとEnterpriseプランの詳細比較

チーム導入において重要な機能の比較を詳しく見ていきましょう。

flowchart LR
    subgraph Team["Team プラン"]
        T1[共有チャット・コマンド・ルール]
        T2[一元化されたチーム請求]
        T3[使用状況の分析とレポート]
        T4[組織全体のプライバシーモード制御]
        T5[ロールベースアクセス制御]
        T6[SAML/OIDC SSO]
    end
    
    subgraph Enterprise["Enterprise プラン"]
        E1[Teamの全機能]
        E2[プール使用量]
        E3[請求書/発注書による請求]
        E4[SCIM シート管理]
        E5[AIコード追跡APIと監査ログ]
        E6[きめ細かな管理者権限とモデル制御]
        E7[優先サポートとアカウント管理]
        E8[請求グループ]
        E9[サービスアカウント]
    end

Enterprise固有の機能

Enterpriseプランでは、大規模組織向けの高度な管理機能が提供されます。

会話インサイト

Cursorは各Agentセッション内のコードとコンテキストを分析し、どのような種類の作業が行われているかを把握できます。

カテゴリ 分析内容
作業種別 Bug Fixes、Refactoring、Explanation
作業タイプ Maintenance、Bug Fixing、New Features
複雑さ プロンプトの難易度と具体性

これらのインサイトは組織やチーム全体で集約・分析でき、AI活用の効果測定に活用できます。

請求グループ

利用状況とコストを組織構造にひも付ける「請求グループ」機能を使用できます。

  • グループごとのコスト追跡
  • 予算アラートの設定
  • 外れ値の監視
  • チーム別のAI活用度の把握

サービスアカウント

サービスアカウントは、人間以外のアカウント(およびそれに紐づくAPIキー)です。

  • Cursorの設定やAPI呼び出しの自動化
  • クラウドエージェントの呼び出し
  • 個々の開発者アカウントに紐づけない安全なワークフロー自動化
  • アクセス管理や認証情報の定期的な更新の容易化

チームダッシュボードの活用

Cursorのチームダッシュボードは、チーム管理の中心となる機能です。

チームの作成

  1. Cursor Dashboard(https://cursor.com/dashboard)にアクセス
  2. 「Team」タブを選択
  3. 「Create New Team」をクリック
  4. チーム名と説明を入力
  5. プラン(TeamまたはEnterprise)を選択

メンバーの招待と管理

招待方法

チームメンバーを招待する方法は複数あります。

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1. メールによる招待
   - ダッシュボードの「Members」セクションから「Invite」をクリック
   - 招待するメンバーのメールアドレスを入力
   - ロール(Admin/Member)を選択
   - 招待を送信

2. 招待リンクの共有
   - 「Generate Invite Link」をクリック
   - リンクの有効期限を設定
   - リンクをチームメンバーに共有

3. SCIM(Enterprise)
   - IdPからの自動プロビジョニング
   - ユーザーのライフサイクル管理の自動化

ロールと権限

ロール 権限
Owner すべての管理権限、チームの削除
Admin メンバー管理、設定変更、Team Rules管理
Member 通常の利用権限、Team Rulesの適用を受ける

使用状況の分析

ダッシュボードでは、チーム全体の使用状況を可視化できます。

  • メンバーごとのAgent使用回数
  • Tab補完の利用統計
  • モデル別の使用状況
  • コスト分析(Enterpriseプラン)

Team Rulesによる組織標準の展開

Team Rulesは、チーム全体で共有されるルールをダッシュボードから一元管理できる機能です。ローカルのエディタにファイルを保存する必要なく、チームメンバー全員に自動的に適用されます。

Team Rulesの作成

  1. ダッシュボードの「Team Content」タブを選択
  2. 「Rules」セクションに移動
  3. 「Add Rule」をクリック
  4. ルールの内容を記述
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# TypeScriptコーディング規約

## 基本原則

- strictモードを必ず有効にする
- anyの使用を禁止
- 関数の戻り値の型を必ず明示する

## 命名規則

- 変数・関数: camelCase
- クラス・インターフェース: PascalCase
- 定数: UPPER_SNAKE_CASE
- ファイル名: kebab-case

## エラーハンドリング

- try-catchブロックでエラーを適切に処理
- カスタムエラークラスを使用
- エラーログは構造化して出力

強制ルールとオプションルールの使い分け

Team Rulesには、適用方法によって2種類のタイプがあります。

強制ルール(Enforced Rules)

チームメンバー全員に常に適用されるルールです。

使用場面:

  • セキュリティポリシー(機密情報の取り扱い規約)
  • 必須のコーディング標準(言語バージョン、フォーマット規則)
  • 禁止事項(特定のAPIやパターンの使用禁止)
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type: enforced
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# セキュリティ必須ルール

## 禁止事項

以下のパターンは絶対に使用しないでください:

1. ハードコードされた認証情報
   - APIキー、パスワード、トークンをコードに直接記述しない
   - 環境変数または秘密管理サービスを使用

2. eval()の使用
   - セキュリティリスクが高いため使用禁止
   - 代替手段を検討

3. 未検証のユーザー入力
   - すべてのユーザー入力をバリデーション
   - SQLインジェクション、XSSの防止

オプションルール(Optional Rules)

メンバーが必要に応じて参照・適用できるルールです。

使用場面:

  • 特定プロジェクト固有のガイドライン
  • 推奨されるベストプラクティス
  • 参考情報やテンプレート
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type: optional
description: "Next.jsプロジェクト向けのApp Router実装ガイドライン"
---

# Next.js App Router ガイドライン

## Server Components優先

- デフォルトでServer Componentsを使用
- 'use client'は必要最小限に
- データフェッチはServer Componentsで実行

## ディレクトリ構造

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app/
├── (auth)/           # 認証関連のグループ
│   ├── login/
│   └── register/
├── (dashboard)/      # ダッシュボードグループ
│   ├── settings/
│   └── profile/
├── api/              # Route Handlers
└── layout.tsx        # Root Layout
\`\`\`

Team Rules vs Project Rules

Team RulesとProject Rules(.cursor/rules)の使い分けを理解することが重要です。

flowchart TD
    A[ルールの種類] --> B{スコープは?}
    B -->|組織全体| C[Team Rules]
    B -->|プロジェクト固有| D[Project Rules]
    
    C --> E{管理方法は?}
    E -->|ダッシュボードから一元管理| F[Team Rulesとして設定]
    E -->|リポジトリで管理| G[Team Rulesをエクスポート]
    
    D --> H{共有範囲は?}
    H -->|リポジトリメンバーのみ| I[.cursor/rules/]
    H -->|チーム全体| J[Team Rulesへ昇格を検討]
項目 Team Rules Project Rules
管理場所 Cursorダッシュボード リポジトリ内
適用範囲 チームメンバー全員 プロジェクトを開いているメンバー
バージョン管理 ダッシュボードで履歴管理 Gitで管理
更新反映 即時(同期) プル後に反映
適切な用途 組織標準、セキュリティポリシー プロジェクト固有の規約

共有コマンドとチャットの活用

Team Rulesに加えて、共有コマンドやチャットの機能もチーム開発の効率化に貢献します。

共有カスタムコマンド

チーム全体で使用できるカスタムコマンドを定義できます。

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# テストコード生成コマンド
name: generate-test
description: 選択したコードに対するユニットテストを生成
prompt: |
  以下のコードに対するユニットテストを生成してください。
  
  テストフレームワーク: Jest
  カバレッジ目標: 80%以上
  
  含めるべきテストケース:
  - 正常系(期待される入力での動作)
  - 異常系(無効な入力、エッジケース)
  - 境界値テスト
  
  テストコードは以下の構造に従ってください:
  1. describe ブロックでテスト対象を明示
  2. it ブロックで個別のテストケースを記述
  3. AAA パターン(Arrange-Act-Assert)を使用

共有エージェントトランスクリプト

Cursor 2.0以降では、Agentとの会話をチームで共有できるようになりました。

活用シーン:

  • PR(プルリクエスト)に会話履歴を含める
  • 社内ドキュメントにAIとのやり取りを記録
  • 他のメンバーが同じコンテキストから新しい会話を開始

トランスクリプトはフォークできるため、知識の共有と再利用が容易になります。

セキュリティと管理者制御

チーム導入において、セキュリティは最重要事項の一つです。

組織全体のプライバシーモード制御

Teamプラン以上では、組織全体でプライバシーモードを制御できます。

設定 説明
Privacy Mode: On コードがAIモデルの学習に使用されない
Privacy Mode: Off デフォルトの動作
Enforced メンバーが設定を変更できない

サンドボックスターミナルの管理者制御

Enterpriseプランでは、Sandboxed Terminalsの標準設定をチーム全体に強制適用できます。

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設定可能な項目:
- サンドボックスの利用可否
- Gitへのアクセス許可
- ネットワークアクセスの制御

これにより、Agentが実行するシェルコマンドのリスクを組織レベルで制御できます。

監査ログ

Enterpriseプランでは、以下のイベントのタイムスタンプ付きログを確認できます。

  • ユーザーアクセス
  • 設定変更
  • Team Ruleの編集
  • メンバー管理操作

これらのログは、コンプライアンス要件への対応やセキュリティインシデントの調査に活用できます。

チーム導入のベストプラクティス

段階的な導入アプローチ

大規模な組織でCursorを導入する場合、段階的なアプローチが効果的です。

flowchart LR
    A[パイロット] --> B[小規模展開] --> C[全社展開]
    
    A -->|"1-2チーム<br/>2-4週間"| A1[効果測定<br/>課題抽出]
    B -->|"部門単位<br/>1-2ヶ月"| B1[ルール調整<br/>トレーニング]
    C -->|"全社<br/>継続的"| C1[最適化<br/>ガバナンス強化]
  1. パイロットフェーズ: 1-2チームで試験運用し、効果と課題を把握
  2. 小規模展開: 部門単位で展開し、Team Rulesを調整
  3. 全社展開: 全組織に展開し、継続的な最適化を実施

効果的なTeam Rules設計

最小限の強制ルール

強制ルールは本当に必要なものだけに限定します。

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推奨される強制ルール:
- セキュリティポリシー
- 法的要件(ライセンス、著作権表記)
- 重大なバグを防ぐルール

避けるべき強制ルール:
- 好みに基づくスタイルガイド
- プロジェクトごとに異なる可能性のある規約
- 頻繁に変更される可能性のあるルール

文脈に応じたオプションルール

プロジェクトや技術スタックに応じて選択できるオプションルールを充実させます。

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オプションルールの例:
- React/Vue/Angular 別のコンポーネントガイドライン
- REST API/GraphQL 別の設計規約
- マイクロサービス/モノリス別のアーキテクチャガイド

メンバーへのトレーニング

チーム導入の成功には、メンバーへの適切なトレーニングが欠かせません。

トレーニング内容 対象者 所要時間目安
基本操作(Tab補完、Agent) 全員 1-2時間
Team Rulesの理解と活用 全員 30分
ダッシュボード管理 管理者 1時間
セキュリティポリシー 全員 30分

トラブルシューティング

Team Rulesが適用されない

原因と対処法:

  1. 同期の遅延

    • Cursorを再起動
    • ネットワーク接続を確認
  2. ルールの設定ミス

    • ダッシュボードでルールのステータスを確認
    • フロントマターの構文をチェック
  3. 権限の問題

    • メンバーがチームに正しく追加されているか確認
    • ロールと権限を確認

メンバーの招待が届かない

対処法:

  1. 迷惑メールフォルダを確認
  2. メールアドレスの入力ミスをチェック
  3. 招待リンクを直接共有

使用状況が更新されない

対処法:

  1. データの反映には数時間かかる場合がある
  2. メンバーがCursorにログインしているか確認
  3. サポートに問い合わせ(Enterpriseプラン)

まとめ

本記事では、CursorのBusiness/Enterpriseプランを活用したチーム導入について解説しました。

重要なポイントを振り返ります。

  • 適切なプラン選択: チーム規模と必要な機能に応じてTeam/Enterpriseプランを選択
  • Team Rulesの活用: 組織標準をダッシュボードから一元管理し、チーム全体に展開
  • 強制/オプションの使い分け: セキュリティは強制、ベストプラクティスはオプションとして提供
  • 段階的な導入: パイロットから始めて、フィードバックを基に最適化

CursorのTeam機能を活用することで、チーム全体で統一されたAI駆動開発環境を構築し、生産性とコード品質の向上を実現できます。

参考リンク