はじめに
Cursorは、AIを中心に設計された次世代のコードエディタです。VS Codeをフォークして構築され、コード補完やチャットといった機能がエディタの深部に組み込まれています。2025年以降、Fortune 500企業の半数以上が採用し、何百万人もの開発者に日常的に利用されるまでに成長しました。
本記事では、CursorがなぜAI駆動開発において革新的な存在なのか、その特徴と主要機能を解説します。この記事を読むことで、以下のことが理解できます。
- CursorがVS Codeフォークとして誕生した経緯とAIネイティブ設計の意義
- OpenAI、Anthropic、Google、xAIの複数AIモデルへのアクセス方法
- Tab補完、Agent、Rulesなど主要機能の概要と活用シーン
- 従来のエディタやGitHub Copilotとの違い
- Cursorを導入すべきかの意思決定ポイント
実行環境と前提条件
Cursorを利用するための環境要件は以下のとおりです。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| オペレーティングシステム | Windows 10以上、macOS 10.15以上、Ubuntu 20.04以上/Debian 10以上 |
| Cursor バージョン | 2.3以降(2025年12月時点の安定版) |
| インターネット接続 | 必須(AIモデル利用に必要) |
前提条件
- プログラミングの基礎知識(言語は問いません)
- VS Codeの基本操作経験があると移行がスムーズです
- Gitの基本操作(clone、commit、push等)を理解していると便利です
CursorとVS Codeフォークの関係
CursorはMicrosoft製のVS Codeをフォーク(派生)して開発されたエディタです。VS Codeの拡張機能エコシステム、テーマ、キーバインドをそのまま引き継ぎつつ、AIをエディタのコア機能として統合しています。
なぜフォークが必要だったのか
従来のAIコーディング支援ツールは、既存エディタの「拡張機能」として提供されてきました。この方式には以下の制約があります。
- エディタのコア機能への深いアクセスが制限される
- UIのカスタマイズに限界がある
- パフォーマンス最適化が困難
Cursorは、AIをエディタの「拡張機能」ではなく「中核機能」として位置づけることで、これらの制約を解消しました。ファイル編集、ターミナル操作、コードベース理解といったすべての機能がAIと密接に連携する設計となっています。
VS Codeからの移行
CursorはVS Codeとの高い互換性を維持しています。ワンクリックで以下の設定をインポートできます。
- 拡張機能
- テーマ
- キーバインド
- settings.json
VS Codeで使い慣れた環境をそのまま持ち込めるため、学習コストを最小限に抑えながらAI機能の恩恵を受けられます。
AIネイティブ設計とは何か
CursorのAIネイティブ設計には、3つの特徴があります。
コードベースの深い理解
Cursorはプロジェクト全体をセマンティック解析し、埋め込みベクトルとしてインデックス化します。これにより、以下のことが可能になります。
- コードベース全体を対象としたセマンティック検索
- 関数やクラスの参照箇所の特定
- プロジェクトの文脈を考慮したコード提案
規模や複雑さに関わらず、Cursorはコードベースの仕組みを学習し、適切な提案を行います。
複数AIモデルへのアクセス
Cursorでは、以下のプロバイダーから最先端のAIモデルを選択できます。
| プロバイダー | 主要モデル | 特徴 |
|---|---|---|
| Anthropic | Claude Opus 4.5 / Sonnet 4.5 | 高度な推論能力、エージェント機能 |
| OpenAI | GPT-5.2 / GPT-5.1 Codex Max | コーディング特化、高速処理 |
| Gemini 3 Pro / Gemini 3 Flash | 大規模コンテキスト、マルチモーダル | |
| xAI | Grok Code | コーディング特化 |
| Cursor | Composer 1 | Cursor専用の高速エージェントモデル |
タスクの性質に応じて、速度重視のモデルや品質重視のモデルを使い分けられます。Auto設定を選択すると、Cursorが最適なモデルを自動で選択します。
自律性のスライダー
OpenAIの元エンジニアであるAndrej Karpathy氏が指摘するように、優れたLLMアプリケーションには「自律性スライダー」が存在します。Cursorでは、開発者がAIにどこまで主体的に動かせるかをコントロールできます。
- Tab補完: 細かい入力補助。開発者が主導権を持つ
- インライン編集(Ctrl+K): 特定箇所への自然言語による編集指示
- Agent: フルオートノミーでタスク全体をAIに委任
この段階的な自律性により、タスクの複雑さや確信度に応じた適切なAI活用が可能になります。
Cursorの主要機能
CursorのAI駆動開発を支える主要機能を解説します。
Tab補完
CursorのTab補完は、単純なコード補完を超えた予測機能です。独自のカスタムモデルが、直近の編集履歴を学習し、次のアクションを驚異的な速度と精度で予測します。
flowchart LR
A[入力開始] --> B[ゴーストテキスト表示]
B --> C{Tab押下?}
C -->|はい| D[提案を受け入れ]
C -->|いいえ| E[Escでキャンセル]
D --> F[次の編集位置へジャンプ]
F --> BTab補完の主な特徴は以下のとおりです。
- 複数行編集: 複数行にわたる編集候補を一括で取得
- スマートリライト: 自然な入力を補完し、意図を理解したコードに変換
- ファイル間ジャンプ: 関連するファイルの編集箇所へ自動でナビゲート
- 自動インポート: TypeScriptやPythonで必要なインポート文を自動追加
Agent
Cursor Agentは、複雑なコーディングタスクを自律的に実行するAIアシスタントです。自然言語で指示を出すだけで、以下のツールを駆使してタスクを完遂します。
| ツール | 機能 |
|---|---|
| ファイル読み取り | プロジェクト内のファイルを読み込み、コンテキストを理解 |
| コードベース検索 | セマンティック検索で関連コードを特定 |
| Grep検索 | テキストベースの高速検索 |
| Web検索 | 最新のドキュメントやAPIリファレンスを取得 |
| ファイル編集 | コードの追加、修正、削除を実行 |
| ターミナル実行 | コマンドラインツールの実行 |
2025年10月にリリースされたCursor 2.0では、マルチエージェントインターフェースが導入されました。git worktreesやリモートマシンを活用することで、複数のAgentを並列に実行できます。
Rules(ルール)
Rulesは、AIの動作を定義するカスタムインストラクションです。プロジェクト固有のコーディング規約やフレームワークの優先設定を記述することで、一貫性のあるコード生成が可能になります。
Rulesには以下の種類があります。
- User Rules: 個人の設定。すべてのプロジェクトに適用
- Project Rules:
.cursor/rulesに配置。リポジトリ単位で適用 - Team Rules: 組織全体で共有する標準規約
Project Rulesの例を示します。
|
|
インライン編集(Ctrl+K)
選択したコードに対して、自然言語で編集指示を出せる機能です。差分プレビューで変更内容を確認してから適用できるため、安全にコード修正ができます。
// 例:関数を選択して「この関数をasync/awaitに変換して」と指示
function fetchData(url) {
return fetch(url).then(res => res.json());
}
// Cursor が以下のように変換
async function fetchData(url) {
const res = await fetch(url);
return res.json();
}
MCP連携
Model Context Protocol(MCP)により、外部ツールやデータソースをCursorに統合できます。以下のようなサービスと連携可能です。
- GitHub(リポジトリ、Issue、Pull Request)
- Figma(デザインデータ)
- Linear(プロジェクト管理)
- Slack(チームコミュニケーション)
- Notion(ドキュメント)
- データベース(SQL操作)
GitHub Copilotとの違い
CursorとGitHub Copilotは、どちらもAIコーディング支援ツールですが、アーキテクチャと設計思想が異なります。
| 観点 | Cursor | GitHub Copilot |
|---|---|---|
| 提供形態 | スタンドアロンエディタ | VS Code/JetBrains等の拡張機能 |
| AIモデル | 複数プロバイダーから選択可能 | OpenAI系モデル中心 |
| エージェント機能 | Agent(自律的タスク実行) | Agent Mode(拡張機能として提供) |
| コードベース理解 | ネイティブ統合 | 拡張機能経由 |
| ルールシステム | Rules(多層構造) | instructions.md等 |
| 独自モデル | Composer 1(専用最適化) | なし |
Cursorの強みは、AIがエディタのコア機能として統合されている点です。GitHub Copilotが拡張機能として動作するのに対し、Cursorはファイル操作、ターミナル、検索といったすべての機能がAIと密接に連携します。
一方、GitHub Copilotには以下の強みがあります。
- VS CodeやJetBrains IDEなど既存環境でそのまま利用可能
- GitHubエコシステムとの深い統合
- 企業向けライセンス体系の成熟
料金プラン
Cursorは以下の料金プランを提供しています(2026年1月時点)。
| プラン | 料金(月額) | 主な機能 |
|---|---|---|
| Hobby | 無料 | 制限付きAgentリクエスト、制限付きTab補完 |
| Pro | $20 | 拡張Agent制限、無制限Tab補完、Background Agents |
| Pro+ | $60 | Proの全機能 + 全モデルで3倍の使用量 |
| Ultra | $200 | Proの全機能 + 全モデルで20倍の使用量、新機能への優先アクセス |
| Team | $40/ユーザー | 共有チャット、一元化請求、使用状況分析、SSO |
| Enterprise | カスタム | 監査ログ、SCIM、きめ細かな管理者権限 |
まずはHobbyプランで試用し、本格的に活用する場合はProプランへの移行を検討するとよいでしょう。
Cursorを導入すべきケース
Cursorの導入を検討すべき状況を整理します。
導入を推奨するケース
- AI駆動開発を本格的に導入したい: Agentによる自律的なタスク実行を活用したい場合
- 複数のAIモデルを試したい: Claude、GPT、Geminiなど最適なモデルを選択したい場合
- 大規模コードベースを扱う: セマンティック検索とコンテキスト理解が必要な場合
- チームでAIコーディング規約を統一したい: Rulesによる一貫したコード生成が必要な場合
導入を慎重に検討すべきケース
- JetBrains IDEから離れられない: IntelliJ IDEA、PyCharmなどを継続利用したい場合
- 既存のGitHub Copilotに満足している: 現状のワークフローで十分な場合
- オフライン環境で開発する必要がある: Cursorはインターネット接続が必須
まとめ
Cursorは、VS Codeフォークとして誕生したAIネイティブなコードエディタです。OpenAI、Anthropic、Google、xAIの複数モデルへのアクセス、Tab補完、Agent、Rulesといった機能により、AI駆動開発の可能性を最大限に引き出します。
従来の拡張機能ベースのAIツールとは異なり、エディタのコア機能としてAIを統合することで、シームレスな開発体験を実現しています。まずは無料のHobbyプランで試用し、AI駆動開発の新しい世界を体験してみてください。